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科学研究費助成事業新学術領域研究(研究領域提案型)2018~2022年度
マルチスケール精神病態の構成的理解

領域代表 林(高木)朗子 
理化学研究所 脳神経科学研究センター 多階層精神疾患研究チーム

計画研究

Research

A02 アブダクション(仮説導出)型アプローチ

精神病態の分子基盤解明を可能にする次世代トランスオミクス技術の開発

研究代表者
柚木 克之
理化学研究所・生命医科学研究センター・統合細胞システム研究チーム・チームリーダー
連携研究者
石濱泰(京都大学・薬学研究科・教授)
曽我朋義(慶應義塾大学・環境情報学部・教授)

研究概要

 精神疾患の分子基盤を多階層ネットワークとして解明するうえで必要となる次世代トランスオミクス技術を開発する。現状のトランスオミクス技術はminutesスケールで変動するメタボロームやリン酸化プロテオームなど「速い」オミクス階層を縦断するネットワーク再構築には対応している。しかし精神疾患の分子基盤が従うと考えられるトランスクリプトーム、発現プロテオーム、エピゲノムなどのオミクス階層はhoursあるいはdaysスケールであり、現行のトランスオミクス技術では対応できない。
そこで本計画研究では、時間スケールの違いをこえて代謝と遺伝子発現のオミクス階層間をつなぐ次世代トランスオミクス技術を開発する。当該次世代技術により、現在のトランスオミクス技術では扱えない精神疾患をはじめとする様々な疾患や生命現象の分子基盤解析が可能となる。また、他班と連携して当該次世代技術を患者由来iPS細胞や培養神経前駆細胞等のトランスオミクス解析に適用し、遺伝的バックグラウンドやストレスによる神経系細胞の機能変質の背後にある分子基盤についての仮説(e.g. 新規経路の予測)を多階層ネットワークとして他班に提供する。さらに、数理モデル解析により多階層ネットワークの中心的部分を同定し、責任分子候補をin silico操作する。以上のトランスオミクス・システム生物学的手法を用いることにより、本領域の主要目標である「精神病態の階層縦断的な構成的理解」のうち、ナノ(遺伝子・分子)からマイクロ(シナプス・細胞)のスケールに至る階層間連結を実現する。

論文

  1. †Krycer J.R, †Yugi K (16 authors omitted), Soga T, *Kuroda S, and *James D.E, Dynamic metabolomics reveals that insulin primes the adipocyte for glucose metabolism
    Cell Rep. 21 (2017) 3536–47.
  2. *Yugi K, Kubota H, Hatano A, and *Kuroda S, Trans-Omics: How To Reconstruct Biochemical Networks Across Multiple ‘Omic’ Layers
    Trends in Biotechnology 34-4 (2016) 276–90.
  3. Yugi K, †Kubota H, (14 authors omitted), Soga, T, and *Kuroda S, Reconstruction of insulin signal flow from phosphoproteome and metabolome data
    Cell Rep. 8 (2014) 1171-83.