Menu
科学研究費助成事業新学術領域研究(研究領域提案型)2018~2022年度
マルチスケール精神病態の構成的理解

領域代表 林(高木)朗子 
理化学研究所 脳神経科学研究センター 多階層精神疾患研究チーム

計画研究

Research

A03 仮説検証に力点を置いたアプローチ

双極性障害・統合失調症のトランスオミックス・モデリングによる構成的理解

研究代表者
加藤 忠史
理化学研究所脳神経科学研究センター精神疾患動態研究チーム・チームリーダー
研究分担者
吉川武男(理化学研究所脳神経科学研究センター分子精神遺伝研究チーム・チームリーダー)

研究概要

 双極性障害と統合失調症は、二大精神疾患と呼ばれる社会的影響の大きな疾患であり、その解明が急務である。いずれもゲノムを基盤として、発達期の環境要因が関与するといった共通性があり、関連遺伝子や環境要因にも共通性が指摘されている。その病態については、様々な仮説が提案されてきたものの、これまでの研究の方向は単一の階層に止まり、分子、細胞、神経回路、脳という各階層が乖離したままの状態であるため、これらの精神疾患を全体として理解するには至っていない。
本研究では、これらの精神疾患の病態を、階層を超えて構成的に理解することを目指す。
そのため、双極性障害・統合失調症の家系解析で見出された候補遺伝子や、死後脳解析から得られた候補分子について、細胞内・細胞間情報伝達異常における役割について解析を行うとともに、そのモデリングを行う。また、これらの原因遺伝子のモデル動物を用いて、行動解析、形態学的解析から病態関連神経回路を同定する。見出した原因神経回路について、オミックス解析を活用して病態関連セルタイプを同定し、特異的な神経回路操作を行うことにより、行動変化の発現メカニズムを検討すると共に、モデリングを行う。
また、精神疾患患者より作成したiPS細胞由来神経細胞および脳オーガノイドについて、オミックス解析を行い、精神疾患の細胞病態の研究を進める。
これらの研究を通して、原因遺伝子から細胞内病態、神経回路病態を経て行動変化に至る、階層を超えた精神疾患モデルを構築し、双極性障害と統合失調症の病態機序を構成的に理解する。

論文

  1. Kato TM, Kubota-Sakashita M, Fujimori-Tonou N, Saitow F, Fuke S, Masuda A, Itohara S, Suzuki H, and *Kato T, Ant1 mutant mice bridge the mitochondrial and serotonergic dysfunctions in bipolar disorder.
    Molecular Psychiatry (2018) June 11.
  2. Kasahara T+, Takata A+, Kato TM+, Kubota-Sakashita M, Sawada T, Kakita A, Mizukami H, Kaneda D, Ozawa K, *Kato T, Depression-like Episodes in Mice Harboring mtDNA Deletions in Paraventricular Thalamus.
    Molecular Psychiatry 21 (2016) 39-48. (+co-first authors)
  3. Bundo M, Toyoshima M, Okada Y, Akamatsu W, Ueda J, Nemoto-Miyauchi T, Sunaga F, Toritsuka M, Ikawa D, Kakita A, Kato M, Kasai K, Kishimoto T, Nawa H, Okano H, Yoshikawa T, *Kato T, *Iwamoto K, Increased L1 retrotransposition in the neuronal genome in schizophrenia.
    Neuron 81 (2014) 306-13.