領域代表 林(高木)朗子
理化学研究所 脳神経科学研究センター 多階層精神疾患研究チーム
Research
A02 アブダクション(仮説導出)型アプローチ
精神病態の関連因子は分子から脳領野まであらゆる階層で報告されている。従って、単一階層の考察のみで病態を理解することは困難である。また、疾患モデル動物も多様で、個々の観測結果から病態を理解することは容易でない。本研究では、in silico で各階層の病態因子を構成し、それらを機能的観点から縮約してつながりを理解し、精神病態の理論的理解を目指す。シナプスの強度の指標であるスパインの体積は、神経活動がない状況でも常に揺らいでいることがわかってきた。このスパイン揺らぎは、記憶の神経回路メカニズムに関与することが予想されている。近年、スパイン揺らぎが、精神疾患モデル動物の多くで異常に大きいことが報告され、病態因子として注目されるようになっている。本研究では、これまでに培った数理モデルの技術を活かし、疾患動物のシナプス可塑性・揺らぎの異常が、記憶・学習障害を引き起こすメカニズムを、理論的に研究する。モデリングにより各階層での異常(ミクロなシナプス性質の変化、メゾな局所神経回路の活動の変化、マクロな脳領域連関による学習機能の変化)をつなぐ数値実験を行う。In silico で精神病態を構成し縮約し、マルチスケール病態の因果関係の理解を目指す。