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科学研究費助成事業新学術領域研究(研究領域提案型)2018~2022年度
マルチスケール精神病態の構成的理解

領域代表 林(高木)朗子 
理化学研究所 脳神経科学研究センター 多階層精神疾患研究チーム

計画研究

Research

A01 データ駆動型アプローチ

ストレスによる認知情動変容を担う多階層プロセスと精神疾患への関与の構成的理解

研究代表者
古屋敷 智之
神戸大学・医学研究科・薬理学分野・教授
研究分担者
那波宏之(新潟大学・脳研究所・分子脳生物学分野・教授)
澤田誠(名古屋大学・環境医学研究所・脳機能分野・教授)

研究概要

 社会環境から受けるストレスは、短期的には適応反応を引き起こすが、長期的には抑うつや不安といった負の行動変容をきたし、精神疾患のリスク因子となる。これまでの研究では、個体のストレス刺激が、炎症関連分子やドパミンを介し、内側前頭前皮質などストレス関連脳領域の神経細胞の機能や形態を変容し、ストレス感受性を制御することが示されてきた。ストレスは、ストレス関連脳領域の各細胞種で、反応の速い細胞内情報伝達変化や代謝変化と反応の遅い遺伝子発現変化を引き起こす。その結果、神経細胞の機能・構造変化が特定の入出力を変化させ、局所から広域に亘る神経回路変容を誘導する。すなわち、ストレス感受性制御は分子-細胞-回路-行動の多階層にまたがるマルチスケール現象であるが、これらの多階層を繋ぐ因果律は不明である。
 本研究は、ストレスによる各脳領域・細胞種での転写・エピゲノム制御、細胞内情報伝達、代謝経路といった多階層分子変容を同定する。また、ストレスによる神経細胞の機能・形態変容をシナプスから局所・広域回路に亘り可視化する。これらを統合してインシリコストレスモデルを創成する。マウス・ヒト培養細胞でのストレス関連刺激による変化を調べ、個体での結果と比較する。インシリコストレスモデルの妥当性とストレス感受性との関連を分子操作や光・化学遺伝学的操作により検証するとともに、正常動物のストレス感受性操作や精神疾患モデル動物のストレス感受性の正常化を試みる。このようにストレス感受性制御を司るマルチスケール現象を解明し、これを操作する技術を確立することで、精神疾患の治療に資するストレス病態メカニズムの理解を目指す。

論文

  1. Nie X, Kitaoka S, Tanaka K, Segi-Nishida E, Imoto Y, Ogawa A, Nakano F, Tomohiro A, Nakayama K, Taniguchi M, Mimori-Kiyosue Y, Kakizuka A, Narumiya S, *Furuyashiki T. The innate immune receptors TLR2/4 mediate repeated social defeat stress-induced social avoidance through prefrontal microglial activation.
    Neuron (2018) Epub ahead of print.
  2. Shinohara R, Taniguchi M, Ehrlich AT, Yokogawa K, Deguchi Y, Cherasse Y, Lazarus M, Urade Y, Ogawa A, Kitaoka S, Sawa A, Narumiya S, *Furuyashiki T. Dopamine D1 receptor subtype mediates acute stress-induced dendritic growth in excitatory neurons of the medial prefrontal cortex and contributes to suppression of stress susceptibility in mice.
    Molecular Psychiatry (2017) Epub ahead of print.
  3. Deguchi Y, Harada M, Shinohara R, Lazarus M, Cherasse Y, Urade Y, Yamada D, Sekiguchi M, Watanabe D, Furuyashiki T, Narumiya S. mDia and ROCK mediate actin-dependent presynaptic remodeling regulating synaptic efficacy and anxiety.
    Cell Reports 17 (2016) 2405-17.